法定相続情報証明制度のまとめと注意点

一通り「法定相続情報証明制度(http://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00284.html)」のことを話すと、おばあちゃんはお茶の替えを用意するために席を立った。お母さんはここまでおじいちゃんが話してくれたことを簡単にノートにまとめると、大きく頷く。法定相続情報証明制度はまだ新しい制度である。

簡単にまとめると、

 

  1. 戸籍謄本をはじめとした「法定相続情報証明制度」の申請に必要な書類を用意する
  2. 用意した書類を管轄の窓口(法務局の登記窓口)に提出し制度の申請をする
  3. 法務局側で提出された書類と相続関係のチェックを行い問題がなければ「相続関係一覧図」を作成する
  4. 作成された一覧図の写しは何枚でも無料で交付してもらえる
  5. 相続手続きをしたい窓口の数だけ一覧図の写しを交付してもらう
  6. 窓口に一覧図を提出し相続の手続きを行う

 

である。

 

お母さんはおじいちゃんに聞いた制度の内容のメモをチェックした。それから、確認するように読み上げる。

「これでいいんですよね?」
祖父
「ああ、それでOKだよ。今までいくつもの窓口で同時に相続手続きをするためには同じ戸籍謄本が何枚も必要だった。だが、この制度を利用することで相続関係を公的機関がチェックしてまとめ、証明してくれる。証明された内容の写しを持って行けばいいだけだから、戸籍謄本を何セットも取得する必用がなくなったんだ。戸籍謄本を何セットも取得しなくて済むということは、それだけ手数料という金銭的負担も軽くなる。取得のために役所に何度も足を運ぶ必用もなくなるし、遠方の自治体から戸籍を何度も取り寄せなければならず時間がかかるというデメリットも軽減されるんだ」
「なるほど。・・・デメリットの軽減、と。これは、総合的に見ると相続手続き自体の負担が減るというメリットにもなるということですね」
祖父
「その通り。このメリットとデメリットはしっかりお向かいの奥さんに使えて欲しい」
「わかりました」
祖父
「それと、人によっては法定相続情報証明制度」を使うことによりかえってデメリットもあるということも伝えて欲しい」
「ずいぶん相続手続きを楽にする制度に感じますけど、かえってデメリットが生じることもあるのですか?」
祖父
「ある」

 

おじいちゃんは頷いてお茶を飲みます。しかし、湯飲みは空でした。ずいぶんと熱心に話し込んだものです。おじいちゃんは苦笑して湯飲みを置くと、真面目な顔で話し出しました。

 

■法定相続情報証明制度の注意点

 

祖父
「法定相続情報証明制度は、何度も戸籍謄本を取得しなければならない人や、あちこちの金融機関に口座があるという人には嬉しい制度だ。でもね、お母さん、逆のパターンを考えてごらん」
「逆のパターン?」
祖父
「例えば、銀行の口座はA銀行にだけ、しかも一つしかないという人や、特に不動産を所持しておらず相続による名義変更の必用がない人。戸籍謄本が簡単に取得できて、しかも枚数が少ない人。銀行に一度足を運べば相続手続きが終わってしまう、戸籍謄本を何セットも取得する必用がないという人が、この制度を使ってメリットを得られるか考えてごらん」
「ああ、そうですね!一度の戸籍謄本の取得で、しかも必用な分の戸籍が簡単に取得できて銀行の窓口一つで相続手続きが完了してしまうような人は、法定相続情報証明制度を使うとかえって手間がかかってしまいますね」
祖父
「そうなんだ。この制度は確かに相続手続きの負担を減らすが、戸籍の取得や手続きを考えてみると、かえって制度を使うことによって負担が増えてしまう人がいる。そこはよく考えなければいけないね」
「そうですね。面倒な相続手続きを楽にしようとして制度を使ったら、かえって制度の手続きも増えて大変だったでは意味がありませんものね。このこともお向かいの奥さんにちゃんと伝えないと」
祖父
「うん、そうだね。それからお母さん、もう一つ忘れていることはないかな?」
「忘れていること?・・・あ!」
祖父
「思い出したようだね」
「この制度ははじまったばかりだということですね」
祖父
「そうだ。これも大切なことだから、お向かいの奥さんに伝えなければいけないね」

 

おじいちゃんが深く頷きました。

台所でお茶の換えを用意していたおばあちゃんが戻ってきて、おじいちゃんとD美さんの湯飲みにお茶を注ぎました。

 

■法定相続情報証明制度ははじまったばかり!よく確認を

 

祖父
「この法定相続情報証明制度ははじまったばかりの制度だ。世の中は制度ができてから、制度に合わせて動く」
「制度ができる前に準備をしてしまうと『やっぱり制度やめます』という困った事態だってあり得ますものね。金融機関なんかは制度に合わせて専用の手続き書類を作ったり、従来の手続き書類を制度に合わせて変えたり、従業員に制度の研修や申し送りをしたりしなければいけないですものね。世の中に一つ法律や制度ができるだけでも、準備はかなり大変ですし、影響が出ますね」
祖父
「そうだ。だから、制度なんかの準備は実際に制度が何時から行われるかが確定してからということが多いだろうね、実務では思いもよらないトラブルが起こることもあるし、制度がはじまってすぐはまだ各窓口側で一生懸命準備をしている段階ということも多いんだ」
「だからこそ、制度がはじまってすぐには対応できない窓口もあるし、制度自体が長く続けられている制度より不安定なところがあるということですね」
祖父
「うん、これも忘れずお向かいの奥さんに伝えておくといいだろう」

 

■最後に

 

おじいちゃんとおばあちゃんにお礼を言って帰宅したお母さんはさっそくお向かいの奥さんへ電話をかけました。忙しい時間に電話をかけてしまったことを謝罪してから法定相続情報証明制度のことを話すと、お向かいの奥さんは声に喜色を滲ませます。

向かいの奥さん
「実は今日ね、戸籍謄本を取りに行ったの。でも、義父が若い頃どこかに転居していたみたいで、足りない分の戸籍はそちらの自治体から取得して欲しいと言われたのよ。銀行の口座もたくさん持っているし、不動産の名義変更もしなければいけない・・・どうやって進めたらいいか考えてうんざりしていたところなの」
「そうだったの。この制度を使うと、手続きを同時進行しても、その分だけ戸籍のセットを用意する必用がなくなるわ。あなたのお宅にはメリットのある制度ではないかしら?」
向かいの奥さん
「そうね。でも、今、主人と話して、遠方の自治体から戸籍謄本を取得したとしても、それで相続手続きができるかわからないじゃない。私たち、戸籍や法律のことはあまりよくわからないのよ。何度も『足りません』と、手続きをしに行っても差し戻しされそうで怖いわ」
「あら、それなら大丈夫よ。この制度は弁護士や司法書士に依頼すれば代理してくれるの。戸籍謄本集めもしてくれるから、プロに相談してみるのが一番だわ。自分でやるのはやっぱり大変よ」
向かいの奥さん
「そうね。ありがとう、主人と相談して、司法書士さんに依頼することにするわ。そうすれば、私が何度も役所や法務局とやり取りする必用もないし、相続手続き自体がスムーズに行くはずだもの」
「そうだと思うわ」
向かいの奥さん
「ありがとう。また何かあったら相談させてちょうだい」

 

お母さんは挨拶して電話を切りました。相続手続きはとても大変そうです。これで少しはお向かいの奥さんの負担も減るのではないでしょうか。同じくらいの子供を持つ者同士、夕飯の買い出し前に子育てや家庭の話題に花を咲かせられる日も遠くないことでしょう。お母さんは鼻歌交じりにダイニングに戻ります。今日の夕飯は出前のピザです。後かたづけも簡単です。お母んの家の夕飯問題も解決しています。

 

しかしこの時、お母さんは思いもしなかったのです。再びすぐにお向かいの奥さんから電話がかかってくることを・・・。

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