法定相続分のあの《分数》!相続の基礎について知っておこう④

B太
「お父さんとお母さんにお願いしたんだけど、やっぱり駄目だって」

B太君がしょんぼりと言いました。おばあちゃんは夕飯のために茄子を水洗いしながら、今日もクーラーの効いたおじいちゃんとおばあちゃんの家で勉強しているB太君の、幼いながら苦労のにじみ出た愚痴を聞いていました。「そうなの」と相槌を打つと、B太君は「うん」とうなだれます。

B太君は、二度目の分数のテストも満点で、お父さんとお母さんにとても褒められたとのことでした。ご褒美に、自分の部屋にもクーラーを着けて欲しいとお願いしたらしいのですが、あっさりと「駄目」と言われてしまったのだそうです。

大人にも電気代や一カ月の生活費といった事情があるわけですから、B太君のお父さんとお母さんを責めるわけにもいきません。「いずれ、順番にね」というお父さんとお母さんの言葉を信じるしかないのです。しかし、B太君は不満だったようです。

B太
「僕の部屋にクーラーつけてくれなかった。分数のテスト、頑張ったのに」
祖母
「まあまあ、いずれつけてくれるとお父さんもお母さんも約束してくれたんでしょ。それまでB太君も広い心で待ってあげて」
B太
「でも、待っていたら夏が終わっちゃうよ。冬にクーラーをつけても意味ないじゃん」

B太君はぷっと頬を膨らませます。B太君の向かいで新聞を読んでいたおじいちゃんが笑い出しました。

祖父
「はっはっは、B太君の不満もわかるが、お父さんとお母さんが今度と言ったんだから、その時を楽しみに待つのもいいものだぞ。何、B太君がテストでもう10個くらい100点をとっているうちに、次の夏が来るさ」
B太
「えー・・・」
祖父
「まあまあ、そういじけなくてもいいじゃないか。おじいちゃんとしては、B太君の部屋にクーラーがない方が嬉しいかな。こうやって学校の宿題を涼しいおじいちゃんの家でしてくれるからね。クーラーがないおかげで、おじいちゃんは大好きなB太君にいっぱい会える」
B太
「そっか。僕もおじいちゃん大好き。おじいちゃんの家も好きだよ」
祖母
「あら、おばあちゃんは?」
B太
「もちろん、おばあちゃんのことも大好き!」
祖母
「まあ、嬉しい。宿題を頑張るB太君には、特別にケーキを出しましょうね」
B太
「やったー!」
祖父
「か、母さん、私もお母さんが大好きだよ!」
祖母
「はいはい。お父さんもケーキが食べたいんですね。おべっかを使わなくても、素直に『ケーキが食べたい』って言えばいいじゃないですか」
祖父
「・・・やっぱり母さんは私にだけ塩飴みたいな対応だ」
祖母
「塩飴みたいな対応ならまだいいじゃないですか。塩みたいな対応だったら塩辛いだけですけど、塩飴なら少しは甘いんですから」

 

■相続分の計算に使うあの分数!どうして数字が違うの?

 

おばあちゃんは冷蔵庫からケーキの箱を取り出しました。いただきもののケーキです。箱には苺ショートが4ピース入っていました。おばあちゃんはさっそく皿に取り分けると、B太君とおじいちゃん、そして自分の分をテーブルに並べました。飲み物は冷たい麦茶にしました。

B太君は美味しそうな苺のケーキを見て目を輝かせます。実は甘い物が大好きなおじいちゃんも目を輝かせていました。似た者同士の孫と祖父です。

祖父
「ところでB太君、この前の相続の話は覚えているかな?」
B太
「相続の話?・・・あ、分数計算の?」
祖父
「うん、その分数計算の話だ。おじいちゃんと二人で分数計算の勉強をした時に、B太君が『どうしてばらばらの分数を使うんだろう』『同じ分数にすればわかりやすいのに』と言ったね。よければおじいちゃんがその疑問にお答えしよう!」
祖母
「二人で勉強じゃなくて三人でしょう。私もいましたよ、お父さん」
祖父
「はいはい。それで、どうだい、B太君。さらに勉強したおじいちゃんの成果を見てくれるかい?」
B太
うん、見る。どうしてばらばらの分数を使うのか教えて!」
祖父
「よし、じゃあ教えよう。相続ではそれぞればらばらの分数を使って法定相続分を計算する。相続人の組み合わせによって使う分数が変わってくるから、B太君の言うように、とてもややこしいんだ。ややこしいと、その分だけ計算ミスに繋がりやすいし、相続知識は難しいものだという印象にも繋がってしまう。しかし、相続人の組み合わせによって分数が変わることにはとても大切な意味があるんだ」
B太
「大切な意味?一体どんな意味があるの?」
祖父
「うん、それはだね、難しくならないように説明しよう」

 

法定相続分は相続人の組み合わせによって相続分の計算に使う分数が変わってきます。

①被相続人の配偶者と子供の場合は配偶者が1/2で子供全員合わせて1/2

②被相続人の配偶者と両親の場合は配偶者が2/3で両親合わせて1/3

③被相続人の配偶者と兄弟姉妹の場合は配偶者が3/4で兄弟姉妹が合わせて1/4

 

このように、相続人の組み合わせごとに計算に使う分数が変わってきます。分数が変わってしまうと計算ミスしやすくなりますし、考え方も複雑になってしまいます。一言でいうと、面倒です。

B太君の言うように、1/2や3/4と言わず全て同じ分数を使うと楽ですよね。しかし、それができない理由があるのです。その理由とはズバリ「遺産の性質」です。

遺産とは、「もらってラッキー」というような棚からぼた餅的なお金ではありません。確かに遠方の親族が急に亡くなって、多額の遺産が転がり込むというケースがないわけではありません。「笑う相続人」という言葉もありますから、遺産が「自分が稼いだ財産ではないけれど急に転がり込んでお金持ちに」というケースが存在しないわけではないのです。

しかし、世の中のほとんどは、遺産相続で揉めて殺人事件には発展しません。豪邸や金塊が遺産であったためにドラマのような親族感争いに発展するというケースもなく、とても地味な相続です。

例えばお父さんが亡くなり、お母さんと子供が預金と父親名義の土地と家を相続したとしましょう。このお母さんと子供は果たして「ラッキー」なんて考えるでしょうか。お父さんが亡くなって・・・という悲しい気持ちももちろんあることでしょう。それに加えて「今後の生活はどうしよう」という気持ちもあるのではないでしょうか。

そう、そこが相続のポイントなのです。

 

■遺産は遺された家族の生活のための財産という性質も

 

祖父
「お父さんが亡くなって、お母さんと子供はお父さんの遺産で暮らすことになる。もちろんお母さんだって仕事をしてお給料をもらうかもしれないが、お父さんがいない分、所得が減ってしまうケースがほとんどだ。子供の学費や家のローン、生活費、医療費・・・生きるためにはたくさんのお金が必要になる」
B太
「僕の家でも、僕の入学にはランドセルや文房具をそろえなきゃいけなくて大変だったってお母さんが言っていたよ」
祖父
「そうなんだ。まだB太君にはしっくりこないかもしれないが、家を持っていると毎年税金だって払わなければならない。生活するということは支出と無関係ではいられないということなんだ。遺産には、そんな遺族の生活を助けるものという性質もあるんだよ」

 

遺産相続が発生するということは、家族の誰かが亡くなるということです。亡くなった人は仕事をしてお給料をもらうことはできません。遺族にとっては遺産こそが今後の生活のための基礎になるといえるでしょう。だからこそ分数が変わってくるのです。

 

祖父
「B太君の家は四人家族だね。もしお父さんが急に事故で死んでしまったら誰が困るかな?」
B太
「うーん。僕とお母さんとA子」
祖父
「おじいちゃんとおばあちゃんは年金があるからね。一緒に生活しているB太君やお母さんなんかよりはお金も生活にも困らないかもしれない。じゃあ、おじちゃんはどうかな?」
B太
「うーん、おじちゃんも自分でお仕事をしてお金を稼いでいるから、僕や妹より困らないかも」
祖父
「そう、そこが相続分の計算で使う分数のポイントなんだよ」
祖母
「つまり、その人が死んで生活に困る人ほど大きな分数が設定されていて、遺産の取り分が多くなっているということですか」
祖父
「その通り!分数をよく見てごらん。お父さんが亡くなったとして、同居している可能性の高いお母さんや子供の分数は大きくて、相続分が多くなるように配慮されている。遺産が遺族の生活のためのものであるからこそなんだ」
祖母
「両親が配偶者や子供の次に取り分が多くなるように設定してあるのは、両親がある程度の年齢になると扶養や介護の関係で同居している可能性が高いからかしら」
祖父
「うん、そんな感じだろうな。兄弟姉妹が最も遺産の取り分が少なくなっているのは、仲の良い兄弟姉妹でもある程度の年齢になるとそれぞれ結婚したり、一人暮らししたりして、自分たちの財産と家族を築くからだろう。別に兄弟姉妹の遺産が入らなくても、奥さんや子供、両親ほど困らないんじゃないかという話だな」
B太
「なるほど。遺産は遺された家族の生活のためのものでもあるから、遺されたら生活が困る人ほど多く遺産を受け取ることができるようにしているってことだね?」
祖父
「その通り!分数は全部同じにしてしまった方が確かに計算はしやすいが、違った分数が割り当てられていることにはきちんと意味があるんだ。もちろん、遺族の生活のことだけでなく、相続や生活、人間関係や慣習など、色々なことを考えた上で法律は決められるんだ。法律で決まっていることにはきちんと意味があるということだ」
B太
「おじいちゃん、凄い!いっぱい勉強したんだね」
祖父
「えへん!」
祖母
「そうそう、これからももっと色々勉強してくださいね。じゃないと、すぐにB太君に追い抜かれますよ」
祖父
「母さんは相変わらず塩飴のような感想だな・・・」
祖母
「おやつがケーキですしB太君はお父さんに甘いんですから、このくらいでちょうどいいんですよ」

 

◆最後に

相続といえばあの分数!

という法定相続分の計算について4回に渡って説明しました。分数は相続人の組み合わせにより別の数字が定められているため面倒に思えますが、実は分数の取り決めにも深い意味があるのです。

次回は法定相続分から離れ、相続と関わりがある制度について見ていきましょう。

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