家に居たい!!要介護者の願いと現実とのギャップ。

居心地の良い家で過ごせるということは私たち誰にとっても切実な願いです。大切な家族とともに過ごせるならもっと素晴らしいでしょう。ですが、時として願いと現実の状況にギャップが生じることがあります。

もどかしい気持ちと後ろめたい気持ち

 

祖父
「やっと家に帰ってこれたぞ」
「すいませんね、おじいさん。なかなか迎えに行けなくて。」
祖父
「せっかく建てた自分の家にいられないなんて考えてもみなかったぞ。まったく…。」
「そうですね…。いろいろ考えてはいるんです。」

小規模多機能施設に入所しているおじいさんと主介護者であるおかあさんの会話です。認知症の症状が出始めてしばらくは同居していましたが、だんだん重くなり、暴言を吐いたり手を出したりするようになったため、まだ十代の子供たちへの影響も考えて施設への入所を決めたのです。

月に一度の通院の際にはおかあさんが付き添っていますが、入所してからの半年間毎回付き添うたびに、俺を追い出したのはお前だと暴言を吐かれるのがつらく、ケアマネージャーと相談し初めて通院後に帰宅してみたのでした。

このように、介護の現場では重要である要介護者本人の意思や希望と、現実のサポート体制の間にはギャップがあり、どのように折り合いをつけていくかということが家族にとって大きな悩みの種となることがあります。

 

要介護者の思いを分析する

祖父
「何のために生きてるんだかわからないな…なんにもできなくなって。」
「まだまだおじいさん、こうやって話ができるし、ご飯だって自分で食べられるし、何にもなんて言わないでくださいよ。」
祖父
「昔はなんだってできたんだ。体が元気なことだけが自慢で、なんだってやって稼いだんだ。だから大きな家が建てれた。この家は俺が生きた証なんだ、だから家にいたい。そうでなければあんなに頑張ったことがみんな無駄になってしまうんだ。」
「おばあさんがよく言ってましたね、おじいさんはとにかく丈夫で働き者だって。」
祖父
「あんなに頑張って働いて年取ったら家族といられなくなるなんて考えてもかったな。」
「おじいさん、でも子供たちのおじいさんであることには変わりないんですよ。」
祖父
「家にいられなきゃ意味がないんだ。」

 

戦後の激動の時代を生き抜いた世代にとって、家は現代の私たちが考える以上の大きな意味を持つことがあります。どのくらいの財産を蓄えたか、どのくらい懸命に働いたかが存在価値を図る指標になっていたのです。

歳を取り働けなくなった途端存在価値を見出せなくなり、自分は役立たずだとこぼす人に私自身多く出会いました。身体の衰えという変化に気持ちがついていかず、自身でもまだその変化に対応しきれていないのかもしれません。

男性であれば様々な種類の仕事で培った技術を発揮する場所、女性であれば多くの場合、家事の技術や地域の人間関係の中で構築した自身の立ち位置などが、体力の衰えや家族の構成の変化などにより失われることになります。

このように家に帰りたいという直接的な願いが現実的に叶えられない場合、要介護者の願いの意図を分析し、それまでの人生を踏まえ、現在の認知症という病気や新たな環境の変化に要介護者自身が順応していくためのプランを立てていくことが助けになります。

なぜそのように言うのだろうと考えるのです。また暴言などの症状があまりに強い場合は、医師に相談しつつ服薬等により落ち着いて要介護者が過ごすための対策を立てていくことにもなるでしょう。

 

居場所を整える

祖父
「また盆栽でもやりたいな。(外を見に行く)あんまり元気がないじゃないか。ちゃんと水の加減を見たり、日に当てたりしないといけないんだぞ。ここにいられたらな、俺がちゃんと面倒を見てあげるのにな。」
「そうなんですね。ちゃんと教えてもらっておけばよかったわ。なかなか忙しくて植木にまで目がいかなくてごめんなさいね。」
祖父
「うまくいかんな、ほんとに。」
「それなら、きんもくせいさんにお願いして置かせてもらうのはどうかしら。ケアマネージャーさんに聞いてみるわ。」

おかあさんはおじいさんが通う小規模多機能施設きんもくせいに盆栽を置くことを思いつき、ケアマネージャーに確認し、その後おじいさんの抱く盆栽を世話するという夢が叶ったのでした。

様々な介護施設が存在するため要介護者や家族の用途や願いに叶う施設を見つけることができます。

この例の場合、小規模という利点を生かし、大規模施設では対応不可能な願いを叶えることができました。実際の家に帰るという願いを達成するのが現実的に難しい場合、施設での要介護者自身の役割を構築していくことができます。

新たな環境で自身の存在価値を見出すよう援助するのです。朝や午後の時間の号令を任せることや、それぞれの特技に合わせたレクリエーションを介護者側が考えていくことができます。

施設の中では忙しいながらも毎日たくさんの会話がなされます。介護者との会話や利用者同士の会話の中で、もやもやする本当の気持ちを話すことにより、精神的な安定につながることもあります。

 

まとめ

このように状況の変化に向き合わなければならないとき、視点を変えてみると必ずしも方法は一つではないことに気が付きます。要介護者が持つすべての願いを叶えることはできなくても、一つ達成できるだけで心地の良い居場所を見つけることができるものです。

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