自筆証書遺言の「自筆」について考える!家族はお手伝いしていいの?

祖父
「お前も遺言書を書きなさい」
祖母
「どうしたんですか、藪から棒に」
祖父
「ああ、それがな・・・」

 

遺言書の内容は相続人にこだわる必要はなし

伊東家のダイニングには午後ののんびりとした空気が漂っています。孫たちもまだ学校から帰る時間ではありません。
お父さんは会社で仕事をしており、お母さんは夕飯の買い出しのため近所のスーパーに行きました。
おばあちゃんはゆったりと編み物を楽しんでいました。最近、おばあちゃん方の間で籠バック編みが流行っているのです。

お茶を飲みつつ趣味の時間を楽しんでいたおばあちゃんにとって、急にダイニングになって来たおじいちゃんの言葉は驚き以外の何ものでもありませんでした。
何せ急に「遺言書を書きなさい」です。おばあちゃんは先日見たドラマ(遺産相続で殺人が起きる)を思い出してしまいました。おじいちゃんにその気はなくても、おじいちゃんの言葉は怪しい以外の何ものでもありません。保険金殺人ならぬ遺産相続殺人です。

おばあちゃんが「何を言っているのですか」という目でおじいちゃんを見ると、おじいちゃんも自分の言葉の唐突さと物騒さに気づいたのでしょう。頭をぽりぽりかいて言いました。

祖父
「今、息子たちから色々聞いて相続対策を考えているだろう。実は私も自筆証書遺言書というものに挑戦してみたんだ。しかし、困ったことになった。どうやら遺言書には色々なルールがあるらしい」
祖母
「ルールというと?」
祖父
「自筆証書遺言だと、自書や押印などだな。簡単に4つのルールがあるんだが、これ以外にも色々な判例なんかがあるそうなんだ」
祖母
「それで、どうしてお父さんが困るんですか。ルールがあるならルールを守って作ればいいでしょう。法律のことがわからなければ、弁護士さんや司法書士さんに相談なさればいいじゃありませんか」
祖父
「うーん、そうなんだが・・・。我が家は、私の名義の通帳もお母さんが預かっているじゃないか。結婚した当初から家計を任せきりで、家計の管理は全部母さんにやってもらっていたから、私と母さんは同じ紙に一緒に遺言書を作った方がいいと思ったんだよ。しかし、共同遺言といって、二人が同じ紙に遺言をすることは禁止されているようなんだ。だから、我が家は私と母さんが財産をきちんと整理して、それぞれ遺言をすることになる」
祖母
「そうですね。・・・それでどうして私が遺言書を書くことになるんです?」
祖父
「相続対策をするなら、私だけが遺言書を書いてもいけないだろう。母さんも自分の財産を整理する意味で遺言書を書いてみたらいいんじゃないか?」
祖母
「あら、実は長年私が家計を預かっていたせいで、自分の財産についてよくわかっていないのかと思いましたよ。だから私に先に書かせて、それを見て自分の財産と私の財産を線引きしたり、書き方の参考にしたりするのかと」
祖父
「ぎく。・・・いやいや、決してそうじゃないぞ」
祖母
「まあ、いいですけどね。証明書類関係は家にいる私が何時も代わりに取得していましたから。何だったら、お父さんの代わりに遺言書を書きましょうか?どんなふうにまとめたいんです?」
祖父
「ううん、土地と建物、それから預金か。兄弟仲良く、法律通りにわけてもらえればいいんだが・・・」
祖母
「法律通りにわけるのだったら、遺言書の意味がないじゃないですか。そもそも、遺言書は法律での分割に優先するのでしょう?だったら、もっとお父さんの希望をきちんと書けばいいじゃないですか」

 

ここで少し補足します。

 

遺言書は遺産の分割法方やそれぞれの相続人が遺産を受け取る割合を指定することができます。

遺言書は相続対策としても有効な方法なので「生前、そう考えていたのか」と相続人の遺産手続きの指針にもなります。ですから、遺産を相続人にわけるという形で指定してもいいですし、まったく相続人ではない人に渡したいという指定でも差し支えありません。必ずしも相続人にこだわる必要はありません。

おじいちゃんとおばあちゃんの会話の続きを見てみましょう。

自筆証書遺言は自書が基本!他人は一切手伝っては駄目?

祖父
「それよりも、わしが気になるのは自筆証書遺言のルールだな。文面を考えてもらうのはいいのか?遺言は最初から最後まで一人で作成手続きをしないと、自書とみなされないかもしれない。これは大変じゃないか?」
祖母
「でも、お父さん、世の中の色々な書類は、旦那さんに代わって奥さんが取得する・・・ということも珍しくありませんよ?自治体の役所に行くと、旦那さん本人ではなく奥さんが書類を取得していたり、手続きをしていたりしますよね。自筆証書遺言のルールが自書だとして、ちょっとでも他の人が手を貸したら違反ということはないんじゃないですか?」
祖父
「いや、しかし、役所の手続きと自筆証書遺言の作成は別物だろう。・・・うーん、実は私もよくわからない。実際、自筆証書遺言を作るとして、どんなふうに作られているのだろうな。皆、やはり一人で情報を集めて、一人で作っているものか?」
祖母
「役所での手続きは、奥さんだと確認できれば『代わりにどうぞ』とやらせてくれることもありますよね。家族であれば、委任状を提出すれば書類を取得できることも多いでしょうし。自筆証書遺言も、委任状があれば代わりに書いたり、本人の代わりに弁護士や司法書士に相談することもできたりするのかしら?」
祖父
「自筆という意味は『自分でやりなさい』ということのようだから、どこまで他の人が関われるかは疑問だな」

 

まず自筆証書遺言ですが、役所の手続きや書類の取得のように、委任状があるから代わりに書いていいというルールはありません。パソコンなどの機器で作成せず、自分の手で書くことがルールです。ただし判例では、自分で書くことが難しい状態で添え手が認められたケースもあります。しかし誰かが手を添えて助けることが全てのケースで認められるわけではないため、あくまで「自分で書くこと」が必要になります。この点、世の中の手続きで旦那さんに代わって奥さんが手続きできるケースとわけて考えてください。

奥さんが家計を管理していても、委任状を作って旦那さんの自筆証書遺言を奥さんが書いていいというルールはありません。「お前、代わりに書いておいてくれ」「役場の手続きだってOKだからいいだろう」は自筆証書遺言においては、基本的に通用しません。

ただし、奥さんが旦那さんの遺言書作成に協力したり、話し合いに参加したりすることは問題ありません。法律事務所に遺言書の作成を依頼した場合、依頼人(遺言書作成希望者)と家族(奥さんなど)が一緒に来ることはよくあります。旦那さんの遺言書作成に必要となる書類等を奥さんが届けに来ることもあります。もちろん遺言書作成の前段階である相談に参加することもあります。

しかし、奥さんが単独で「夫の遺言書を作りたいのですが」と訪れた場合、法律事務所はびっくりすることでしょう。皆さんも、「旦那さんの遺言書なのに奥さんが単独で相談に来るの?怪しい」と思ってしまうのではないでしょうか。基本は本人が主になり、家族はそのお手伝いという感じです。

最後に

祖父
「自分の相続対策なのだから、自筆証書遺言も含めて遺言書の丸投げは駄目だということだな」
祖母
「実際に、法律事務所に奥さんが旦那さんやご家族の相続相談に来ることは多いみたいですね。お隣さんも、おじいちゃんがご病気だから、奥さんが付き添って弁護士さんと相談なさっているようですよ」
祖父
「自筆証書遺言は簡単だとC太郎に聞いたが、どうやらカップラーメンを作るよりかなり難しい要だぞ?やっぱり失敗なく作るためには、専門家に相談するのが近道みたいだな」

 

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